2018年4月13日金曜日

人は空冷式?

体で感じる温度(体感温度)には、気温や日照だけでなく、湿度や風(気流)も関係しています。
気温が同じ30度であっても、空気が乾燥していてカラッとした天気の日よりも、湿度が高くジメジメした日の方が、より暑く感じます。
湿度が変化するだけで体感温度は大きく変わります。湿度が高い方が温度が伝わりやすくなるからです。特に気温が23度を超えたあたりから急に影響が出るそうです。

昔から住宅の材料として使われてきた木や紙、土などには、湿度変化の波をおだやかにする働きがあることが知られるようになってきました。
湿度を調節する働きは、湿度の高い日本の夏を衛生的で快適に過ごすためにはとても大切です。太平洋側の地域では、冬の過度な乾燥を抑えることによってインフルエンザウイルスの繁殖を抑える効果が有ります。

人間は主に皮膚表面の汗の気化熱によって体を冷やしています。気温が体温より高くても放熱できるのはそのためです。(犬などは体温調整のための汗腺が鼻の頭や足の裏にしかないので夏には弱く、地面を掘って冷たい土に腹を直接付けて冷やす光景をよく見かけます。)

当社の番犬、ビ-グル犬チャッピ-。地面に腹ばいになって寝そべっています。

効率よく気化熱を奪うためには空気の流れが必要です。風速が1m早くなる毎に約1度ほど体感温度が下がります。このため、夏は窓を開けて風を入れたり扇風機を回すことで涼をとります。冬は逆で、わずかなすきま風さえも寒く感じて防ごうとします。
かつて、アリゾナの砂漠で気温50度の世界を体験したことがあります。乾いた熱風が強く吹き付ける中、宿のプールに飛び込んだのは良かったのですが、出ると水がまるでアルコールのようにいっきに蒸発し、体が乾くまでの数秒間はスーッとして寒かったのを覚えています。

気温50度を体感したアリゾナの砂漠

夏、うっすらと汗ばんだところへ風が吹いてきた時の気持ち良さや、風を利用して涼しくする(感じる)ためのヨシズやすだれ、打ち水、風鈴などの工夫は、ストレス解消や情緒の安定、感性の発達といった心の面、さらには日本文化の醸成にも影響しています。
風通しの良い環境は、暑い時期に体を冷やし、家の中に溜まった熱気や湿度を外へ逃がす働きをすることで、健康だけでなく衛生面、経済面でも重要です。

住宅設計士 中島桂一

2018年4月1日日曜日

人生フル-ツ

 桜の咲く季節、早いもので今年ももう4月、高崎映画祭の時期となりました。
 約1年前、シネマテ-クたかさきで見た「人生フル-ツ」という映画がホリゾント賞(野心的・革新的作家性を備え、日本映画界の未来を照らすであろう作品に与える賞)を受賞し、映画祭で3日間連続上映されました。

 「人生フル-ツ」は、愛知県の高蔵寺ニュ-タウンに住む建築家、津端修一さん90歳、妻の英子さん87歳の老夫婦の日常を映したドキュメンタリ-映画です。

 1960年代、建築家の津端さんは自然との共生を目指し高蔵寺ニュ-タウンの計画を始めましたが、経済性、合理性を優先する時代に合わず、当初の理想は実現できませんでした。そこで津端さんはニュ-タウンの中に土地を購入し、家を建て、雑木林を育て始めたのです。
 夫婦で畑を耕し、果樹を手入れし、英子さんは収穫したたくさんの野菜や果物で日々の料理を作ります。何でも手作り、自分たちでできることは可能な限り自分たちの手で、質素だけれど豊かな暮らしを50年続けてきました。
 自宅は津端さんが尊敬するアントニン・レ-モンドの自邸に倣って設計、平屋ですが高窓から光を取り入れ、のびのびした居心地の良さそうな雰囲気が伝わってきます。
 日々の健やかな暮らしが人生という果実を育て、住まいも住む人と一緒に歳を取り味わいを深めていく。瑞々しい遊び心とゆっくり積み重なる時間が、美味しいフル-ツのような人生を作る。歳を取ることは美しい、と素直に思える素敵な映画でした。
 
 この映画は東海テレビが制作、先日テレビでも放映されました。現在も全国各地で上映会が開かれており、静かなブ-ムとなっているようです。
 28日の上映後には、建築家の水上勝之さんをゲストに迎え関連企画も開催されました。
≪スクリ-ント-ク≫
アントニン&ノエミ・レ-モンドと『人生フル-ツ』
~人生100年時代に向けて~

 群馬音楽センタ-を設計した建築家レ-モンド、津端邸も高崎にある旧井上房一郎邸も、共にレ-モンドの自邸に倣った住宅で、とてもよく似ています。映画と井上邸と両方鑑賞すれば、レ-モンド・スタイルの津端邸の雰囲気が想像でき、より一層おもしろいことと思います。

 映画館で3回、テレビで2回、計5回この映画を見ましたが、何度見てもいろんなことに気づかせてくれる素敵な映画です。 映画のHPはこちらです→「人生フル-ツ」
                      中島明日香



2018年3月13日火曜日

カッコよくて高性能ならいい家?

 寒暖の差が激しいですね…季節の変わり目、くれぐれもご自愛ください。
 家を新築して引越しをされる方も、この年度替りの時期に多いことと思います。

 これから家づくりをお考えの誰もが、「いい家を建てたい」と望んでいます。ところで、「いい家」というのは、具体的にはどんな家のことなのでしょうか。

²  柱や梁が太くて頑丈そうだ。 しかも総桧造りだし。
²  広くて部屋数もたくさん。設備も充実していて余裕ね。
²  デザインが素敵!
²  大工さんの腕がすばらしい。
²  耐震性能が良いから、地震が来ても安心だ。
²  高断熱高気密に太陽光発電。とっても省エネなんだ。
²  自然素材や県産材にこだわり、健康的でエコなんだぜ。
たしかにこれらは良い住宅の条件のひとつかもしれません。
しかし、もし、これらの条件を「本」に例えるなら、紙質が良いとか製本がしっかりしている、表紙のデザインが良い、活字が大きくて読みやすい、出版社が地元だ、匂いの少ないエコインクを使った…といった部類の話です。
通常の意味で「良い本」とは、そこに書かれている内容が良いということだと思います。つまり、ストーリーが感動的であるとか、自分の悩みに的確に答えてくれているとか、大切なことを教えてくれているなどなど…
住宅ならば、その家で「家族が幸せに暮らせるか」ということだと思います。

いくら高級な材料を使い、近代的で便利な設備を備えた広くてかっこいい住宅でも、陽当たりや風通しが悪くて健康を害したり、使い勝手が悪くてストレスがたまったり、落ち着ける場所がなくてイライラが募ったり、コミュニケーションが取りづらくて家族がバラバラになってしまうような環境であったとしたなら、それは悪い住宅です。むしろ、あちこちにガタがきているような古い家であっても、そこから立派に巣立った子供達が、盆や正月には孫を連れて里帰りしてくるような「田舎の実家」の方が、はるかに良い家だといえるでしょう。
 自分や家族を本当の意味で大切にしてくれる家。つまり、幸せな家庭生活を営むためにふさわしい環境をつくり出してくれる家が、「いい家」であると言えます。
                          住宅設計士 中島桂一



2018年2月26日月曜日

「薪スト-ブのメリット・デメリット①」

 日本人選手が大活躍したオリンピックも終わり、春らしくなってきた日射しの中に少し寂しさも感じます‥季節の変わり目、くれぐれもご自愛ください。
 最近若い世代に人気があるという薪スト-ブ。テレビの話題にも取り上げられることが増えました。

 当社では冬の間はもちろん、春先まで薪スト-ブが大活躍しています。薪ストーブに憧れる人はとても多いようですが、薪ストーブと30年以上付き合ってきた体験から、メリットとデメリットを検証してみます。




 初めにメリットについてです。

まず着火についてですが、薪と焚付けさえあれば意外に簡単です。変な臭いもなく、機械音がしなくて静かです。電源が不要なので、東日本大震災後の計画停電でも全く心配がありませんでした。当社ロビーの場合は、煙突が真直ぐ屋根に抜けていることと、よく乾いた薪を燃やしていることで、煙突掃除も5年に一度で問題なく使えています(あくまで当社の場合ですが)。

なんと言っても暖かさがじんわり、ほんわかとしていてとても楽です。はじめは炎の輻射熱で体と壁、床、天井を暖め、しだいに室温が上昇してきます。遠赤外線効果で温泉のように暖まり、少しくらいの風邪なら治ることもあります。

炎のゆらぎによる癒し効果も魅力です。さらに照明を暗くすれば、微妙な話もしやすいロマンチックな雰囲気に。暖かさと光に吸い寄せられるように家族(や猫)が集まってきます。団らんの核とも言える求心力、家族に秘密は生まれないかもしれません。

また薪を運び、ストーブにくべて火をつける作業は、楽しくて適度な体と頭の運動になります。子供も知恵がつくことでしょう。私の両親は、自分で動ける間はファンヒーターには目もくれずに薪を燃やしていました。




次にデメリットについて。こちらのペ-ジをご覧ください。→「薪スト-ブのメリット・デメリット②」