2015年2月5日木曜日

田島弥平旧宅

 富岡製糸場とともに世界遺産に登録された、絹産業遺産群のひとつ「田島弥平旧宅」を、先週の休みに主人と一緒に見学しました。伊勢崎市境島村にあるこの旧宅は文久3年(1863)に建てられました。



 質の良い蚕の卵を生産するための技法「清涼育(せいりょういく)」を考案した弥平。

 弥平が考案した蚕室の最大の特徴は、屋根の上に見られる換気システム「櫓(やぐら)」
です。
 2階蚕室の四方の窓と、櫓にある窓を開閉することにより温度や湿度の上昇を防ぎ、蚕室内の環境を調整していました。今で言うところの「パッシブ・ク-リング」の1つの方法です。
 屋根幅いっぱいの総櫓(長さ約25m)、内部は大人が立てるくらいの高さがあります。

 養蚕農家というと腰屋根がある建物をすぐイメ-ジしますが、その原型を考案し、「清涼育」の普及に努めたのが田島弥平さんです。
 敷地内には他にも蚕室の建物跡があり、弥平さんが自宅の建物を使っていろいろ研究し、改良と実践を行っていたことがわかります。
 養蚕建物には空気の循環が重要であることを理論的に体系づけ、著書「養蚕新論」「続養蚕新論」により、2階建て、瓦ぶき、櫓という建物の構造は全国各地に広まり、近代養蚕農家の原型となりました。


 約25年前に当社で設計・施工致しました腰屋根のある建物です。(スポ-ツウェア関連会社の事務所です。)
 現代の一般住宅においても、この換気システムは効果的です。養蚕農家の知恵を取り入れて、エアコンなどに頼らず自然の通風をうまく利用するための工夫、おもしろいですね!
 ただ、窓が高い位置にあるのでお掃除が大変かも… 

 設計打ち合わせの時は、窓ひとつ決めるのにもメリット、デメリット両方を提示し、お客様とよく話し合って、一緒に考えて決めていきます。
 蚕であれ人であれ、そこで生き物が健やかに暮らすための工夫から生まれた建物は、その土地の気候風土にも自然に馴染むデザインになるんだなと改めて思いました。

 昨年、世界遺産登録が決まる少し前に富岡製糸場を見学しました。
その時のレポ-トはこちらです。
[投稿 中島明日香]