2015年3月6日金曜日

水槽に学ぶ「住まいの環境」

 会社のロビーで大きな海水魚水槽を始め、11年が過ぎました。
 現在、縦横60cm、長さ1.8mの水槽で、16匹の魚とナマコ、イソギンチャク、サンゴ達が元気に育っています。
 餌やりの他に毎日バケツ2杯分の水換え、毎週休日にはガラスや浄化装置の掃除、その他人工海水を作ったり、照明や殺菌灯、ポンプのメンテナンス‥。
 コツコツと11年も続いたのは、魚やサンゴが可愛くて美しいというだけでなく、水槽の管理は家づくりと共通することが多いからです。
 中でも私が最も勉強になると感じているのは石のレイアウトです。
 

魚たちの「秘密基地」

 水中を泳ぎ回っている魚たちも、夜間や異変を感じた時は、たちまち石やサンゴの陰に隠れてしまいます。また、時として寝床となる石の窪みやトンネルの縄張争いで激しいバトルを繰り広げます。
 どうやら我々が普段、空気に棲んでいるとは意識しないように、彼らも水を意識することはなく、石や砂、サンゴに住んでいると感じているようです。
 
 そこで、それぞれ個性的な彼らがどんな「秘密基地」を必要としているのかを観察しました。
 親分肌のキイロハギには体に見合ったやや大きめの竪穴洞窟が必要なようです。
 人間のように横になって寝るナンヨウハギは体をはさんで固定する横穴のスリットが必須。
 相部屋が好きなアカネハナゴイに個室派のデバスズメダイハシナガベラは…ミナミハコフグは…。
 お客様の要望を取り入れながら家の間取りを考えるのとそっくりです
 

退屈させない工夫

 夜、安心させるだけでなく、昼間、退屈させない工夫も重要です。
 広くて綺麗な南の海から連れてこられたのですから、せめて「ここはここで悪くないね」と思ってもらいたいものです。
 
 そこで、それぞれの「秘密基地」を利用しながら、石のレイアウトをさらに工夫します。
 回遊コースを複数想定し、くぐるところ、すり抜けるところを作ります。さらに、突っつくところ、砂を吹くところ…。寄せては返す波のようにイソギンチャクをそよがせたり…。
 水流、光の当たり方、サンゴの成長も計算に入れて石を組みます。
 
 「飼育」だけでなく「鑑賞」も大切な目的ですから、見た目にも美しく、あたかも自然による偶然の造形であるかのように…。
 まさしく建築や造園と同じ。条件が厳しいほどワクワク係数が上がります。
 

家づくりも環境づくり

 ハコフグやナマコは別として、ほとんどの魚は直接触れることができません。私にできることは、間接的に彼らの環境を整えてあげることだけです。
 でも、環境さえ良ければ、魚もサンゴも健康で生き生きとして、見た目も色鮮やかで美しいものです。石と住みかを改善したことで、魚たちの寿命は劇的に延びました。
 
 そこに住む人にとって良い環境とはどんな環境かを考え、それをどうやって作り出し、維持していくか…。
 家づくりも水槽と同じ。いゃー 勉強になります。
中島桂一