2016年1月30日土曜日

生活を整える

 人が何か作業をすると、材料や道具やらがあちこちに散らかって、乱雑になります。そこで、ひと区切りついたところでゴミを捨て材料や道具を元の場所に戻し、燃料を補給したり、修理や手入れをして整えます。
 毎日の家事に始まり、季節の変わり目、年末年始、人生の節目…。私たちの日常生活は「乱しては整え」の連続です。
 日常を整えておくことは、いざという時にイレギュラーが2重3重に重なり、パニックに陥るのを防ぐという意味で危機管理の基本とも言えるでしょう。

 家を新築、リフォームするのも、「生活を整える」重要な作業だと思います。
 人生の節目に、ご自身やご家族のこれからの生活を長いスパンで見据えて「整える」のです。
 最近はともすれば省エネや予算の情報ばかりが独り歩きし、住宅を建てることをまるで家電品を買うような感覚で考えるような風潮があり、危惧されます。
 もっともっといろんな夢や希望、問題点を出し合い、知恵を引き出し合って、存分に設計の打ち合わせをしましょう。

 団らんや趣味、食事や睡眠、子育て、老後、介護…。
 環境との調和、必要なスペースや空間とそのつながり、コミュニケーションとプライバシー、外装や各部屋の仕上げ材、収納や家事動線、動と静のバランス、省エネや温熱環境、スイッチ、コンセント、設備機器、予算とローン返済…。
 日常はもちろんの事、いざという時も住まいが自分や家族の味方になってくれるように、予想される様々な事態をシミュレーションし、知恵や工夫を間取りや仕様に仕組んでいきます。
 
 住宅の設計というのは、住む人がこれから生きていく上での様々な要素を整える作業、つまり、「人生を整える」大切な作業だと思います。
中島桂一